臨床看護研究の進め方:文献の調べ方、まとめ方
看護研究をしている看護師さんや大学院に入りたての方から、「文献がありません」ということをよく言われます。いきなり厳しい言い方をしてしまいますが、おそらくそれは「文献の探し方が適切ではない」か「文献を探す目的がはっきりしていない」ことが原因だと思います。後者については、別ページ(文献レビューのポイント)を参照してください。このページでは、前者について解説します。全く研究がされていない、これまで世界中の誰一人このテーマについて研究していない、ということは基本的にあり得ません。効果的、効率的な文献の探し方を身につけて、欲しい情報にアクセスしましょう。
※ここでいう「文献」とは、基本的に研究論文のことを指します。
文献の調べ方
文献データベース
文献を探す際は、文献データベースで探しましょう。それぞれのデータベースについて、簡単な特徴等を以下に示します。
データベース名 | 言語 | 特徴 |
医中誌web | 日本語 | 日本の医学・看護学・薬学等の文献が検索できる。人文・社会学系の雑誌に投稿された文献に弱い。 |
メディカルオンライン | 日本語 | 日本の医学・看護学・薬学等の文献や、医薬品・医療機器等の情報を検索できる。人文・社会学系の雑誌に投稿された文献に弱い。 |
CiNii Article | 日本語 | 日本のあらゆる領域の文献が検索できる。全文閲覧はそれぞれの発行元に依存する。社会学系の文献はヒットしないこともある。 |
J-STAGE | 日本語・英語 | 日本のあらゆる領域の文献が検索できる。登載されていない雑誌の文献はヒットしない。 |
Google Scholar | 日本語・英語 | 世界中のあらゆる領域の文献が検索できる。検索結果のUIはいまいちで、閲覧管理や細かいプロンプトを投じることが煩雑。 |
PubMed | 英語 | 世界中の医学・看護学・薬学等の英語文献が検索できる。人文・社会学系の雑誌に投稿された文献はヒットしない。 |
Web of Science | 英語 | 世界中のあらゆる領域の文献が検索できる、世界最大級のオンライン学術データベース。 |
他にも、システマティックレビューが登載されているThe Cochrane LibraryやPROSPEROなどがあります。
データベースによっては、検索にヒットしない文献もあるため、網羅的に文献を収集したい場合は複数のデータベースを活用するべきでしょう。いずれのデータベースにも該当することですが、利用する施設の契約状況によっては、全文アクセスできない文献もあるかもしれません。費用はかさみますが、可能な限り読むべき文献は入手しましょう。
検索キーワードとシソーラス
いずれのデータベースでも、GoogleやYahoo!など、検索エンジンを使用するときのように、思いついた用語を入力すればそれなりに検索してくれるが、漏れなく文献を検索するためには、適切な検索キーワードや検索式をデータベースに与えてあげる必要があります。その時重要となるのが”シソーラス(統制語)”です。PubMedでは”メッシュ”(Medical Subject Headings: MeSH)と呼ばれています。
シソーラスとは、言葉を同義語や意味上の類似関係、包含関係などによって分類した辞書、あるいはデータベースのことです。シソーラスでは、言葉が大分類から小分類にかけて体系的に整理されており、同義語から広義・狭義の類義語などを効率的に調べることが可能です。
例えば、医中誌webの「シソーラスブラウザ」で”糖尿病”と検索してみましょう。たくさんの結果が出力されますが、”糖尿病”と書かれたシソーラス用語を詳しく見てみましょう。統制語”糖尿病”は、”DM (Diabetes Mellitus)”、”Diabetes”、”一次性糖尿病”、”真性糖尿病”、”糖尿病患者”といった同義語があることがわかります。実際の論文中のタイトルや抄録にどのような用語が使われていても漏れなく文献を探したい場合は、この統制語を付けて検索する必要があります。

さらに下部で、用語ツリーが確認できます。ここで、”糖尿病”の上位語には”グルコース代謝障害”、下位語には”前糖尿病状態”や”糖尿病-1型”、さらにその下位語に”Wolfram症候群”があり、ツリー構造を成していることがわかります。すなわち、”糖尿病”と検索すると、その下位に属するものも含めて文献がヒットするということです。あなたがもし、「糖尿病Ⅱ型」の文献のみを検索したい場合は、検索ボックスに”糖尿病”と入力してしまうと、他の文献も多くヒットしてしまいます(ノイズが増える)。その場合、”糖尿病-2型”と検索ボックスに入力することで、手に入れたい文献にヒットする確率が高くなります。

論理演算
複数のキーワードについて、すべてを含む文献を調べたい、いずれかを含む文献を調べたい、ある用語が含まれていない(除外した)文献を調べたい、など、さまざまなニーズが発生します。その際は、論理演算を意識して検索しましょう。

主な入力例は以下の通りです。
検索の種類 | 一般的な入力例 | どんな検索ができるか |
前方一致検索 | nurs* | *(アスタリスク)の前が一致するものを検索 例:nurses, nursingなどを含めて検索 |
フレーズ検索 | “nursing management” | このフレーズで一致するものを検索 単語の順序が逆転しない。間に他の単語が入らない。 |
AND検索 | 看護 AND 管理 | すべて含むものを検索 例:”看護”と”管理”両方が含まれる文献を検索 |
OR検索 | 看護 OR 管理 | いずれかを含むものを検索 例:”看護”もしくは”管理”が含まれる文献を検索 |
NOT検索 | 看護 NOT 管理 | NOTの後の言葉が含まれるものを除外して検索 例:”看護”を含み、”管理”が含まれない文献を検索 |
AND, OR, NOTの組み合わせ | (看護 OR 管理) AND 労働環境 NOT 医師 | 優先順位をつけてAND、OR、NOTを組み合わせて検索 例:”看護”もしくは”管理”を含み、かつ”労働環境”を含んだ文献の中から、”医師”が含まれない文献を検索 |
文献のまとめ方
文献を調べる際は、ぼーっと調べるのではなく、調べた内容や結果をまとめながら調べることをお勧めします。文献検索をするときにしておいた方が良いことは、以下の3点です。
- どの検索キーワードで、いつ検索したのかを書き留める
- 「テーマに近いかも」と思った文献は手元に残しておく
- 手元に残した文献、読んだ文献の内容は一覧で管理しておく
検索キーワードや検索日を記録しておくのは、キーワードの重複を避けたり、最新論文を見落とさないことが理由です。文献検索は1日で終えることは稀で、数日にわたって作業しなければなりません。その際、キーワードや検索式を記録しておかないと、以前と同じキーワードや検索式で何度も検索してしまったりして、二度手間になります。また、検索日以降に最新論文が公開されている可能性もあるため、最終検索日から日にちが空いてしまった場合などに備え、検索日を記録して文献の漏れがないように心がけましょう。
また、文献はその場で1つ1つ細かく読むのではなく、文献を集める日と読みこむ日を分けたほうが良いでしょう。同一日に行う際は、集める時と読む時を分けましょう(午前中に文献を集め、午後集めた論文を読む、など)。手元に残しておく際は、紙、もしくは電子ファイルで全文を保存しましょう。インターネット上にある文献でも、すぐに参照したいときに確認できるようにしておくためです。
集めた文献、読んだ文献は、何らかの形で一覧管理しておくと便利です。最も手軽な方法は、ExcelやGoogleスプレッドシートを使用する方法です。タイトル、雑誌名、著者、出版年、主たる研究の目的、結果、コメントなどを一覧化しておき、サッと確認したいときにいちいち本文を確認するのではなく、その一覧表を見れば概要がわかるようにしておくと、研究計画書や論文執筆のときに便利です。文献整理フォーマットを事前に作っておくと便利です(ただしフォーマット作成に時間をかけない。後で柔軟にフォーマット変更できるようにしておく)。
ExcelやGoogleスプレッドシートを使用する方法以外に、文献管理ソフトを利用する方法もあります。EndNoteやMendeley、Paperpileなど、便利なソフトが多数あります(有料のものが多い)。今回は文献ソフトによる管理方法は割愛します。