report: 日本と諸外国の勤務計画の実態と比較
以前私たちが行った交代制勤務看護職の実態調査について、2023年6月時点で4本の論文が公表されています。中でも、交代制勤務看護職の疲労感と関連する労働状況および閾値に関する論文は、私のresearchmap上で270回以上ダウンロードされており(2023年6月時点)、皆様の関心の高いテーマであることがうかがえます。
また、2022年11月発刊の日本看護協会機関誌「看護」臨時増刊号において、聖路加国際大学の奥裕美先生の記事で諸外国の勤務計画例が公表されています。本記事では、上記調査で得られた日本の勤務計画の実態1と、諸外国の勤務計画2を比較してみたいと思います。
手順
まず、上記調査で得られた1クールにおける日本の交代制勤務(二交代制、長日勤無し)の一般例と、奥先生の記事で紹介されている諸外国の勤務計画について、2週間分の勤務を時間軸に沿ってExcelで作成しました。Excelの1セルを1時間単位で区切り、分単位で定められている勤務時刻は前後どちらかに按分し、1勤務当たりの時間数が文献情報と一致するように改変しました(Table 1)。そのうえで、主要な情報についての概要を作成しました(Table 2)。
結果
作成したTableは下記URLから閲覧できます。
Table 1の緑セルは日勤帯を、赤色セルは夜勤帯を示します。薄い赤色セルは準夜勤帯を示しています。また、Table 2では、各行の最大値を赤字、最小値を青字で示しています。
※詳細な補足事項は脚注に示しています。
特記すべき事項として、まず、1勤務帯の最大労働時間数の最大値は日本の17時間(夜勤)でした。諸外国では12時間が最大でした。また、日本と諸外国の大きな違いのひとつとして、夜勤明けの勤務に特徴があることがわかりました。日本では夜勤明けの翌日を休日とする二交代制勤務が一般的ですが、諸外国では休みとせず、夜勤明けの夕方に再度夜勤を割り振るなど、休日としていないことがわかりました。
さらに、ブラジルを除く国々では、休日数が多いことも特徴です。今回、文献で紹介されている1ヵ月の勤務計画から、任意の2週間を抽出して表にまとめているため、休日が偏っている可能性もありますが、イギリスは8日、フランス・ドイツ・オーストラリアは7日と、十分な休日が確保されています。ブラジルは日本と同様4日の休日ですが、勤務時間が短いことが特徴です。一部12時間勤務もありますが、契約によっては12時間勤務をしなくても良いようです。
2週間分の勤務計画のうち、休息時間について空白セルをカウントした結果、日本が248時間と最も少なく、オーストラリアが279時間で最大でした。日豪の差は31時間あり、日本の看護職のほうが1日以上多く働いていることになります。
まとめ
日本の交代制勤務については、事実上休日数やインターバル等に関するregulationはありませんが、諸外国では規定されているところが多いことが、奥先生の記事で紹介されています。休日数や勤務間インターバルを確保するためには、効率的な業務を行うこともさることながら、人員配置が必要不可欠だと感じます。一方で、労働人口は減少するため、単純にいかないことも事実です。政策と現場のマネジメントに寄与する研究を進めていく必要があります。
本レポートの限界
第一に、Table 1で作成した勤務計画はあくまで勤務計画であり、実際の勤務時間は反映されていません。私たちの調査では、日本の看護職は日常的に1時間以上超過勤務をしていることがわかっています。あくまで調査データの平均値であり、実際はもっと長い時間勤務している方も少なくないと思います。
第二に、比較した対象の多くが欧州諸国であり、アジア圏や中東などの地域は含まれていません。しかしながら、労働衛生管理の面で日本よりも整っている国が多く含まれていると考えられ、比較自体は意義があると考えています。
第三に、看護職の業務所掌は各国の法規に依存するため、各国の看護職が同様の業務を行っているかどうかは不明です。この点の比較は他の論文や専門記事に委ねたいと思いますが、同じ職能の中で比較することも意義があると考えています。
第四に、今回は便宜的に2週間の勤務計画を切り取って比較しましたが、中長期的なスパンで見ると、今回とは異なる結果になる可能性もあります。奥先生の記事2には、諸外国の1ヵ月単位の勤務計画が紹介されていますので、そちらも合わせてご覧ください。
引用文献
- 武村雪絵, 渡邊龍之介, 木田亮平, & 菅野由貴子. (2020). 交代制勤務を行う看護職員の勤務状況と就業継続を可能とする条件: インターネット調査. 日本看護管理学会誌, 24(1), 164-174.
- 奥裕美. (2022). 諸外国における看護職の交代制勤務. 日本看護協会機関誌「看護」74(14), 108-113.

