blog: 交代制勤務看護職における”勤務計画表”

おかげさまで2022年に公表した”Working conditions and fatigue in Japanese shift nurses: A cross-sectional survey1が、2024年2月28日現在、researchmap上で700件以上のダウンロードをいただいております。本論文のLimitationsでも記載の通り、自記式質問紙であることの限界や、それに起因すると考えられるROCの低さといった限界はあるものの、交代制勤務看護職の労働状況と疲労に関する関心が高い結果であると思います。

本記事では、論文の内容から少し離れ、交代制勤務看護職における勤務計画表、いわゆる「勤務表」について話したいと思います。

勤務表はその名の通り、どの看護職がいつ、どんなシフト勤務を行うかを明示したものです。「看護職のベストセラー」とも言われ、新しい勤務表が公開されると、看護職は縦に横にとさまざまな観点からその期間の勤務予定を確認します。

この勤務表は一般的に、部署の担当者(多くの場合看護師長)が作成し、看護部門責任者の決裁のもと、効力を発揮します。日本の場合、従業員は命令権者の業務命令のもとで働くことになるため、この勤務表はいわば「あなたはこの日にこのシフト勤務を行いなさい」という業務命令となります。

勤務表作成者側の視点に立つと、この人はこの日に休み希望を入れているな、とか、新人はこの人と夜勤を組ませようかな、とか、いろいろと頭を悩ませながら、誰がいつどのようなシフト勤務を行うかを考えます。

ご存じの通り、上記のように「働く日」が決められると同時に、「休む日」も決まります。この点が、交代制勤務看護職における勤務表で非常に重要な視点です。

勤務表作成者と命令権者は、「各看護職の”働く日”を決めると同時に、”休む日”を決めている」ということになります。

週休2日制の一般的な企業であれば、基本的に土日祝休みが一般的なので、「自分が休める日はいつだろうか?」と気にすることはありません。しかし交代制勤務看護職は、「自分が休める日はいつだろうか?」ということを、勤務表が公開されるまで知らずに生活しなければなりません。さらに、(基本的なルールはあるものの)定期的な休みを得ることが難しいのが現状です(例えば休みの日と休みの日の間=勤務日が3日だったり5日だったりする)。

この不定期に訪れる休みの日や働く日に、その都度生活リズムを合わせて仕事生活を営む必要があり、このことは想像以上に心身に負担を強いるものです。

つまり、勤務表作成者と命令権者に課せられた「各看護職の”働く日”を決めると同時に、”休む日”を決める」ということは、単に各看護職が働く日を決めているだけでなく、むしろ「各看護職の仕事生活のリズムを、業務命令という形で決定している」ということに他なりません。

もちろん多くの看護管理者は、日々頭を悩ませ、部署の安全と職員の健康を守るべく勤務表を作成している方は多いとは思いますが、一方でそうではない方も現実には存在します。

また、慢性的な人材不足から、どうしても一部の看護職にキツイ勤務予定をお願いせざるを得ない状況があることも確かです。そのような状況のとき、「お願い、今月のシフト厳しいから今月多めに夜勤入って…!」などと、職員との間で交渉する場面もあるでしょう。当該職員も、きちんと説明を受け、納得して看護管理者の提案を受け入れることもあります。ですが、私たちの研究で、そのような上司の対応は、職員の離職意図を抑える効果はあまりなく、やはり他の職員と比較した際、不平等な勤務計画であることが、有意に離職意図を高めることがわかっています2。前述ような対応は、一時的な効果は(臨床的には)あるものの、そのような対応をいつもされることはネガティブな結果をもたらしてしまうということです。

命令権者の責任はとても重大であることは確認しましたが、命令権者(看護管理者)だけの責任や努力だけでは、より良い勤務計画は実現できません。職員の側も、自分の健康やワークライフバランスを守るためには、他の職員の健康やワークライフバランスに配慮しなければならないということです。有給休暇の申請や各種特別休暇の確保は、当然ながら各職員が有する権利として尊重されなければなりません。ですが、自分ばかりその権利を振りかざしてしまうと、他の職員の健康やワークライフバランスを損ね、離職につながります。そうなってしまうと、結果として自分がキツイ勤務をせざるを得ない状況に陥ってしまいます。良好な職場環境をつくるうえで、看護管理者の重要性は大きいですが、同時に職員の側も互いに配慮し尊重し合うことで、自分にとっても良好な職場環境が構築されるでしょう。

勤務表の話題からワークライフバランスにまで話が及びましたが、両者は切っても切れない関係です。ワークライフバランスとは、「ワークライフバランス制度・施策の利用」ではありません。制度を利用する”権利”として考えてしまうと、職場内に分断が生じてしまう可能性もあります(ワーク・ファミリー・バックラッシュ work-family backlash)34。あくまで有限なリソースの中で、勤務表作成者や看護管理者だけでなく、職員全体による職員全体のワーク・ライフ・バランスを高めるための”最大公約数”的な取り組みが重要となることでしょう。

  1. Kida, R., & Takemura, Y. (2022). Working Conditions and Fatigue in Japanese Shift Work Nurses: A Cross-sectional Survey. Asian Nursing Research16(2), 80–86. https://doi.org/10.1016/j.anr.2022.03.001 ↩︎
  2. Kida, R., & Takemura, Y. (2023). Relationship between shift assignments, organizational justice, and turnover intention: A cross-sectional survey of Japanese shift-work nurses in hospitals. Japan Journal of Nursing Science: JJNSn/a(n/a), e12570. https://doi.org/10.1111/jjns.12570 ↩︎
  3. Haar, J., & Spell, C. S. (2003). Where is the justice? Examining work-family backlash in New Zealand: The potential for employee resentment. New Zealand Journal of Employment Relations28(1), 59. https://search.proquest.com/openview/3866eadf92d1bbfcd926648afbee3a62/1?pq-origsite=gscholar&cbl=51645 ↩︎
  4. de Janasz, S., Forret, M., Haack, D., & Jonsen, K. (2013). Family status and work attitudes: An investigation in a professional services firm. British Journal of Management24(2), 191–210. https://doi.org/10.1111/j.1467-8551.2011.00797.x ↩︎

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