report: 看護管理学研究のテーマ変遷 ~Journal of Nursing Management掲載論文の分析~

背景

看護管理学研究におけるテーマの変遷はどんな感じなんだろう?と思ったので、看護管理学分野の国際誌で、看護系トップジャーナルのひとつでもある「Journal of Nursing Management」のテーマ変遷を10年スパンで区切り、Word Cloudを作成してみました。

はじめはabstractでやりたかったのですが、今回検索に使用したPubMedで、abstractだけを抽出してダウンロードする方法がわからなかったのと、とりあえずテーマの変遷をざっくり知れれば良いかなと思い、今回はtitleのみを使用しました。

  • 検索データベース:PubMed
  • 分析方法:

   ①PubMedからJNMの公開論文情報をcsvでダウンロード

   ②1990年代、2000年代、2010年代、2020年代(2022年末まで)にファイルを分割

   ③それぞれの年代でWord Cloudを作成
     除外した単語:’the’, ‘and’, ‘for’, ‘a’, ‘in’, ‘of’, ‘from’, ‘on’, ‘to’, ‘among’, ‘an’, ‘with’, ‘nursing’,  ‘nurses’, ‘nurse’, ‘nurses’
      ※’nursing’, ‘nurses’, ‘nurse’, “nurses’”は、除外せずに解析すると圧倒的に頻出し、チューニングのために除外
    分析ソフト:jupyter notebook (Python)

補足事項:今回は機械的にソフトウェアに放り込んでおり、すべての論文情報を閲覧しているわけではありません。以下、解釈はWord Cloudの出力結果のみを見て記載しています。

結果と解釈

1990年代

頻出語として、management、health service、care、hospital、health care、national healthなどが確認できます。

JNMはイギリスの国際誌ですので、発刊当初はhealth serviceやnational healthのmanagementに関する論文が多かったのかもしれません。

また、careやhospitalという単語も見られるので、病院全体もしくは地域・国レベルでのケア管理などに着目されていたのかもしれません。

2000年代

頻出語として、care、leadership、management、manager、roleなどが確認できます。

2000年代から、transformational leadershipに代表されるように、リーダーシップ研究も最盛期を迎えた時期であり、看護管理学においても、managerのleadershipに着目し、実際のケア管理に関する論文が多く公開されていたのかもしれません。経営学等の流行をcatch upしていることがうかがえます。

また、careの他、practiceやclinicalなどの単語も確認できます。1990年代は、どちらかというと病院や地域・国レベルの議論が見受けられましたが、2000年代になってより実践環境に近いレベルでのmanagementが議論されている印象も受けます。

2010年代

頻出語として、care、leadership、hospital、work、managerなどが確認できます。

2000年代の流れから、以前としてcareやleadershipに関する研究が多くなされていたことが推察されます。特徴的なのは、hospitalという単語です。これは、これまで病院を対象にしていなかったというよりはむしろ、他のセッティングでの研究もされるようになり、論文タイトルにセッティングがわかるように明記し始めたことが影響しているのかもしれません。

また、workという頻出語も特徴的です。2000年代から徐々に、研究のフォーカスが実践環境に移ってきましたが、2010年代はさらに仕事そのものをテーマとした研究が増えていることがうかがえます。他にも、patientやprofessional、practiceといった単語からも、看護師の仕事やその専門性を探求するような研究がされていることが推察されます。

2020年代

頻出語として、COVID、COVID pandemic、cross sectional、experience、qualitative study、cross sectional studyなどが確認できます。

他の年代に比べて件数が少ないため、単純な比較はできませんが、やはりCOVID-19に関する研究が現時点で多いことがわかります。ジャーナルとしても、これらの知見をいち早く共有するという使命のもとで公開されていることが予測されますので、この結果は妥当なものといえます。他の頻出語と組み合わせて考えてみると、COVID-19流行下での看護師の経験やマネジメント、パンデミック時のマネジメントなどに関する研究が多く出版されていると考えられます。

qualitative studyやcross sectional studyなど、研究方法に関する用語の頻出は、論文件数が少なく、いずれの論文タイトルにも記載される用語として頻出している可能性が高いと考えられます。

2020年代はどのようなWord Cloudになるのか、7年後がいまから楽しみです。

まとめ

今回は、看護管理学研究におけるテーマの変遷を概観するため、top journalであるJNMのタイトルでWord Cloudを作成してみました。かなり粗い分析ですが、ざっくりとした潮流は確認できました。

1990年代は、比較的広範囲のマネジメントに関する研究だったのが、徐々に年代を経るにしたがって、看護師の実践環境における看護管理の研究に移行していることがわかりました。

研究の流行は移りゆくものですので、これまで以上にglobalizationが進んだ今日では、また広範囲の研究に移行することも考えられます。研究者としては、常に最新の流行をcatch upしつつ、自分の研究に反映させたいと思います。

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